設計概要

産地の斜陽化が各地で進む中、信楽においてもその状況は加速度を増している。
現代に追従する流れもあるがそれはひとすくいの上澄みでしかなく、この地を支える大部分は沈殿を続けるハード、つまり遺産化する過去である。
それらを再発見、再認識し、それぞれを新たな要素で町全体を繋ぎ合わせていくことが、産業(陶芸)を活用した新しい産地の形づくりとなるのではないだろうか。
そのきっかけとして「文五郎倉庫」が企画された。

陶芸産地・信楽のある窯元にある築50年の倉庫を改装した「文五郎倉庫」。
倉庫は当時としては珍しかったであろうRC造で、多少の劣化はあるものの杉板型枠によるコンクリートの豊かな表情を持っていた。また、外壁には、過去四代の先人の手仕事の遺産とも言える泥の手形が象徴的に残る。
これらの表情は最大限残し、必要箇所にパッチワークを施す「補修」を改装の基本方針とした。

この改装計画では倉庫の機能は維持しつつ、収納品の鑑賞が可能なギャラリー機能、産地とのコラボレーション可能なレクチャールーム機能が空間に求められた。

内装については、ジャンカやコールドジョイント等の不良箇所に元の杉板型枠に合わせた矩形状の左官を施しパッチワーク状の補修を行った。
矩形面の配置はデザインされたものでなく補修必要箇所の分布となっている。
既存壁面とそのパッチワークにより主となる展示空間は構成され、同時にこの空間に展示者へ能動的展示を求めるきっかけを備えた。

並列する三室の中央の部屋には遮光を目的とした建具を壁面補修と同素材の仕上げで三面に設けた。
これらは自然光による劣化を防ぐ物品保存の目的と同時に、映像展示や映像利用のレクチャーを可能とし、既存空間にパッチワークすることでその表情の変容を試みている。

これら「補修」により、先代から続く時間の連続性を寸断することなく、これからの町をもパッチワークしていく拠点となることを期待している。

【概要】

建築主:文五郎窯(奥田文悟、奥田章)

総合ディレクション :松井利夫、上田篤
内外装設計 :田所克庸、上田篤(un voice一級建築士事務所)
グラフィックデザイン :八木良太
家具制作、展示企画・構成 :小山真有
施工・協力:株式会社 朝日ホーム